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そして数年ぶりにそこのオヤジさんと会った。
叔父にあたるその人は元漁師で、漁師・・それも関西のそれによくありがちな乱暴な口ぶりと
見た目のいかつさが特徴的で、けれど喋ってみれば優しいオヤジさんだった。
夏休みや春休みはいつもその親戚に泊まりに行って、漁船にもよく乗せてもらった。
けれど10年程前に脳梗塞をやってから半身が動きづらくなったことでオヤジさんは漁師を引退し
その後は妹にあたる叔母がいっしょに暮らしてずっと面倒を見ている。
そんな事情は知っていたけど、知っていたせいで余計に足が遠のいていた。
今年はオヤジ達が関西で正月を過ごすとのことで、運転手としてなんとなくいっしょについて行ったことで会うことになったのだけど、
いざオヤジさんに会ってみると、すっかり歯が無くなり、ベッドに座って笑っている姿にちいさな衝撃を覚えた。
もうあの頃の面影はすっかり無く、やわらかな表情のおじいちゃんがそこにいた。
衝撃といってもいやなものではなくて、なんだか安心したというかほっとしたような気分で
久しぶりやなあと、おぼつかない言葉で優しく笑ってくれたその顔を見に来て良かったとそのとき本当に思った。
この先いつかもうこの人を見られなくなることも覚悟しなければならないけれど
もうそれは僕自身もそうだ。もうそんな歳になりつつある。
そういうコトを考える。
オヤジさんが船を降りて、いつも誰かと喋っていた近所の漁港に行った。
そのすぐ横は砂浜だったが全て埋め立てられて、広大な敷地となったそこにはいま巨大なアウトレットモールが出来ている。
もうあの頃の面影はない。
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